シンポジウム2022
2022/12/3(Sat) 10:00~12:15
訪花昆虫と花粉の関係 -昆虫と植物の両面から花粉をみる-
日下石 碧 Aoi Nikkeshi
農研機構
12/3(Sat) 10:00~10:45
「花粉」と聞くとどのようなイメージをもつでしょうか?花粉症を思い浮かべることが多いかもしれません。少し悪いイメージの花粉ですが、実は人々の生活に欠かせない存在です。例えば、多くの植物の受粉や、訪花性ハナバチの餌資源などに花粉は必須です。さらに、サプリメントの食用などにも利用されています。本発表では花粉を同定することで分かることや、訪花昆虫の送粉効率調査、花粉に含まれる栄養分析について、花粉中心に発表したいと思います。
前半は訪花昆虫の送粉効率の研究内容として、カキ(柿)の訪花昆虫調査や1回訪花による柱頭花粉調査について紹介します。後半は花粉団子に含まれる栄養分析(タンパク質・遊離アミノ酸)について紹介します。
ミツバチやマルハナバチ等の社会性昆虫は花粉を餌資源として集め、花粉団子にして巣に運びます。花粉団子に含まれる栄養分析の手法、さらに、野外から採取した植物の花粉の分析を行った結果を含めて、議論したいと思います。
ゲノム情報でミツバチの問題を解決する!
横井 翔 Kakeru Yokoi
農研機構
12/3(Sat)10:45~11:30
ミツバチは多くの問題(病気など)を抱えていて、一部の地域ではミツバチ不足が懸念されています。それらの問題を解決する方法の1つとして、ゲノム編集を用いたミツバチの改良があります。ゲノム編集を用いたミツバチの改良にはゲノム情報が必須です。
本講演では、ゲノムやゲノム情報について、わかりやすく説明した後に、ゲノム情報がどのようにゲノム編集に役立つのか、その重要性について説明したいと思います。
ミツバチ問題の解決にゲノム情報が貢献できることをご理解いただければと思います。
ミツバチと腸内細菌の関係
宮崎 亮 Ryo Miyazaki
産業技術総合研究所
12/3(Sat) 11:30~12:15
私たちヒトを含め、地球上の動物は腸内に細菌という微生物を抱えて生きています。近年の様々な研究によって、その腸内細菌が動物の健康や病気、運動能力や精神状態など、様々な側面に影響を与えることが報告されています。
ミツバチも例外ではありません。ミツバチの腸内には非常に特徴的な細菌群が生息しており、その“住まい”を提供しているミツバチに様々な影響を与えながら、そしてミツバチからも様々な影響を受けながら、共に生きています。
さらに、ミツバチの腸内細菌は学術的な研究材料としても優れた生物学的性質を有しており、私たちの研究グループではミツバチを腸内細菌研究の新しいモデルとして扱い、研究を進めています。ミツバチの腸内にはどんな細菌がいるのか、どんな特徴を持っているのか、そしてセイヨウミツバチとニホンミツバチの腸内細菌はどう違うのか、など、最新のトピックをご紹介いたします。
Q&A
Q:腸内細菌は、蜂蜜の中にも含まれますか?(生存できますか)盗蜜などによる腸内細菌の交換などはありえるでしょうか?
A:(宮崎)蜂蜜は殺菌処理されたものではないですし、ボツリヌス菌がいるくらいですから、「いるか、いないか」でいえばいてもおかしくありません。ただ、細菌にとって蜂蜜は生存環境として良いものではないので、腸内細菌の温床になるようなことはないと思います。従って、盗蜜で他群の蜂蜜を体内に取り込むだけでは交換といえるほどの事態は起きないと思います。むしろ盗蜜の過程で、他群ミツバチとの濃厚接触や巣内に長期滞在することで交換が起こる可能性はあると思います。
Q:蜂群が減少するなど問題が発生している巣箱と健全な巣箱での、腸内細菌叢の比較研究などはございますか?
A:(宮崎)この種の研究はいくつかありますが、どれも因果関係がはっきりしないのが現状です。異常が生じている群の腸内細菌叢は乱れていることがしばしば知られていますが、異常が生じたから腸内細菌叢が乱れたのか、腸内細菌叢が乱れたから異常が生じているのか、野外の群ではちゃんと調べられていないと思います。
Q:皮膚常在菌に良い化粧品にかかわっております。はちみつは美容にも良いとされておりますが、ミツバチの腸内細菌がはちみつに影響を与えているのでしょうか?
A:(宮崎)おそらく影響を与えていると思います。蜂蜜はミツバチ同士の栄養交換やミツバチ由来の酵素が関わって作られますので、それらの過程において腸内細菌の関与は十分に考えられます。
Q:花蜜から蜂蜜に変える元となる菌は、発表されていた5種類の中にいるのでしょうか?また、その菌を使って人工的に蜂蜜を作ることは可能なのでしょうか?
A:(佐々木哲彦)花の蜜をハチミツに変換するのは菌ではなく、ミツバチ自身が作る酵素です。